谷口雄太さんの研究論文を読んで、義満から直臣待遇を受けた甲斐氏が、斯波氏の被官という立場を変えず、戦国時代に入っても斯波氏に忠節であり続けたことを知り、大いに驚いた。と同時に、この論文で描かれる戦国前期の斯波氏の記録は、今まで読んだどんな本にも書いておらず、私にとっては初めて接する情報であり貴重で興味深いと感じた。
斯波氏は一般的に、応仁の乱後急速に衰えて姿を消した、というイメージを持たれていると思うが、この論文によると、複数回にわたって越前や遠江の失地回復を試みており、論理的にも心情的にも理解しやすい自然な武士たちの行動が史料から裏付けられている。
谷口さんのお仕事には敬意を表する次第。