今日考えたこと

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空間と座標

空間における位置は座標で表し、座標は実数値で表す、という記述が当たり前になっている。しかし、空間には、ちょっと考えてみるだけでも、反粒子を生み出す、光を始めとする電磁波の伝播を可能とする、などの潜在的微細構造を示唆する経験的事実があり、実数で表現される一様な連続体と見なせるような単純な対象でない可能性がある。

それでも、今のところ、実数の組合わせで空間上の位置を表わすことに反対する人はいないようだ。

それは、空間というよくわからないものを扱うために、空間内の距離の大きさが実数で表現されると仮定して数学的に取り扱い易い仕組みを採用したことが、実用的にうまくいっているので今も継続しているということ、を意味すると考えられる。つまり、矛盾が出ない限り仮説を維持する、という物理学の慣行が背景にあると考えれば、理解はできる。

比較すると、ユークリッド幾何学は、人間の思考の中で点や線や面や立体というものを定義し、それらの間の性質を点や線や面の定義や公理から演繹していくという構造になっており、物理学のように得体の知れないものを相手にするための暗黙の仮定を採用する縛りは無いので、理論体系としてはより明快だ。

ユークリッド幾何学を数学の代表とすれば、一般に、数学と物理学は違う前提から出発している。

数学には、人間の思考の中の対象を探求することはできても、自然界を探究することはできない。

物理学には、座標の考え方からもわかるように、人間による仮定が幾重にも重なった暗黙の前提が存在しているので、どこまで精密さを追及しても自然界の真相が見えてこない構造があるため、人類による探究には回避不可能な壁があるだろう。ということは、いつまで経っても真相にはたどり着けないということになるに違いない。

このような視点から物理学を観察すると、真相にたどり着くことが最優先課題ではない、という指針に従って探究することが生産的である、という暗黙の指導原理の存在が感じられる。