今日考えたこと

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明治39年の漱石

<以下、虚子宛の手紙から抜粋>
明治39年4月1日
 藤村の「破戒」という小説をかって来ました。今三分の一ほどよみかけた。風変わりで文句などを飾って居ない所と真面目で脂粉の気がない所が気に入りました。
明治39年4月4日
 藤村の「破戒」というのを読んで御覧なさい。あれは明治の小説として後世に伝うるに足る傑作なり。「金色夜叉」などの類にあらず。
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明治39年4月「坊ちゃん」発表 (ホトトギス)
明治39年9月「草枕」出版 (新小説)

 

草枕」の後、「二百十日」、翌年「野分」「虞美人草」をへて、翌翌年に「三四郎」、その翌年「それから」と続いていく。
以上を踏まえると、明治39年漱石の創作活動においては画期的な年だと感じる。「猫」を継続して連載しつつ「坊ちゃん」と「草枕」を書いたという状況には興味が尽きない。同じ年に、並行して「破戒」を読んでいた、というのがとても意外に感じる。

漱石後期の「彼岸過迄」から「明暗」に至る、人間の内面に重点を置いた作品群には、「破戒」の影響が時間をかけてじわりと及んでいったのかもしれない。