今日考えたこと

得た知識や考えたことのメモをとるのが主目的です

アキレスと亀の話について

アキレスという俊足の人間がのろまな亀に追いつけない、というパラドックスがある。これについて分析してみた。

 
計算の簡素化のため、アキレスは亀の10倍の速さで100の距離前方にいる亀を追いかけるとする。
(1)アキレスが100の距離を進んで亀の出発地点に着いたとき、亀は10の距離を進む。
(2)アキレスが10の距離を進んで亀の(1)の位置に着くとき、亀は1の距離を進む。
(3)アキレスが1の距離を進んで亀の(2)の位置に着くとき、亀は0.1の距離を進む。
以上の処理を何度繰り返しても、アキレスは亀に追いつくことはない。追いつくまでのアキレスの移動距離の計算結果は、100+10+1+0.1+......=111.1111.....であり小数点以下の値は無限に続くのである。
しかし、現実にはアキレスは亀を簡単に追い越すことができる。
この違いは、「アキレスが亀に追いつけない」のは上記のような分析と計算を行っている人の頭の中だけでのお話であること、に起因する。
 
その計算者は、実際には、アキレスと亀が移動しているのを見ているわけではなく、計算式を見ている。アキレスが亀に追いつくまでに進む距離を、自分にわかりやすいように段階を分けて個別計算し、その個別に計算された距離を合計することで、亀に追いつくまでにアキレスが進んだ距離を算出しようとしている。
ところが、この足し算は無限に続くので、計算者にとっては、正確な距離がいつまでたっても算出されないのである。
 
言い換えると以下のようになる。
ある人が頭の中でアキレスと亀の移動シミュレーションと、それに対応する距離計算を永久に繰り返す状況が、本当の認識対象である「進んだ距離」から「実際の移動現象」へと話題をあっさりと切り替えるレトリックにより、いつの間にか、アキレスと亀の実際の移動現象を認識していると、読者が思い込むように説明が行われている。
そのため、読者は、その計算者がアキレスと亀の移動を観察しているのだ、と知らぬ間に思い込んでしまうのである。
 
このような読者の思い違いが、パラドックスを成立させているのであると、我々が、今、判断することで、「アキレスと亀」のパラドックスは存在することをやめてしまう。