今日考えたこと

得た知識や考えたことのメモをとるのが主目的です

暗い旅

倉橋由美子の「暗い旅」を、35年余り経って再度読了した。
当時、高校生あるいは大学生の私にはよく理解できなかったストーリーの流れがかなり把握できたように思う。
 
全般的に、女性の内面の思考の流れがストーリーのほとんどを占めているので、共感するということは無いが、理解不能というわけでもない。女流文学にそう詳しいわけではないが、かなりユニークな作品ではないかと感じる。
また、文章がしっかりしているところにとても好感が持てる。現代作家の自由奔放な文章群とは違い、私の視点からは推敲の余地がない。
 
新宿や鎌倉や吉祥寺が前半の舞台であるが、京都が後半の舞台としてかなり具体的に使われている。調べると、この作家はデビュー前に京都に住んでいたこともあるということで、納得する。
新幹線の無い時代のため、東京から京都まで特急で移動しているのが不思議な感じ。
そのうえ、京都市内の移動には70年代に廃止された市電を使っている。
様々なJazz喫茶の場面では、たくさんの名曲が引用される。私でも知っている曲が多いのが興味深かった。Jazzは、学生時代にはほとんど縁がなく、社会人になってから少し聞き始めたので、この作家がJazzファンであったことに、今頃気付くこととなった。