今日考えたこと

得た知識や考えたことのメモをとるのが主目的です

度重なる近似について

物理法則はすべて仮説、したがって法則の表現としての微分方程式は、必然的に近似式という姿をとって、法則という名の仮説を表現している。

さて、物理学では、微分方程式の解を求める際に、与えられた関数の式を多項式展開した数式において、高次の項の値は小さいので無視できるとして省略し、低次の項だけの数式によって近似することがよく行われる。
そこでは、近似式としての力学法則の表現である微分方程式を、その高次項を省いて簡素化した微分方程式に変形した上で解を導く、という2度の近似を経た結果としての解が、現象を記述する数式として提示される。

典型的なのが、力学の教科書に必ず載っている、近似解による振り子の等時性の説明。振り子の等時性が、ニュートン運動方程式の近似解により説明できる、とされる。

もともと力学的現象の近似的記述である運動方程式の、近似解による予測値と、測定誤差を常に含む近似値である観測値と、の比較により、振り子の等時性という性質が、運動方程式の近似解として得られた数式で説明できる、という筋道には、近似の多用による現象からの乖離の可能性があり、適正な現象の解明とするには根拠に乏しい感じを受ける。

もっとも、一般的に物理学の研究者にとっては、厳密解にこだわって現象を高い精度で理解することよりも、多重近似解を以って実用的な現象の予測方法を獲得する方が大事な作業なのである、と想定すれば理解は可能。